佐々木隆仁が語る過去と未来11

平成から令和へ

Appleの成功事例から学ぶ

私は、Appleの強みはiCloudだと思っています。iTunesもありますが、ソフトウェアサービスが非常によくできていると思います。そこが他のハードウェアメーカーと違うところです。ソフトウェアサービスはハードウェアでありません。ハードウェアを作っている人たちは、ソフトウェアサービスがあまりよく見えていないのかもしれません。我々はソフトウェアサービス提供している会社なので、ソフトウェアとサービスの価値を伝えても、それが伝わらないことが結構、多いです。なぜ、わかってくれないのだろうというのが、実際に採用してもらわなければいけない立場としては、忸怩たるものがあります。そこを突破して、わかって使ってもらえる人を増やしていかないと、ビジネスとして成り立たないわけです。
そんな状況ですが、一方で、なんでわかってくれないのだろうということについても考えなければいけなかったと思います。

パソコンというハードウェアは壊れて、いつかは買い替える寿命サイクルがあります。そのときにどこのメーカーのWindowsパソコンでもほぼ同じなので、どのパソコンを買ってもよいわけです。そこで、一生懸命ハードウェアの差別化を図っていても、次もこのパソコンを使うという圧倒的なものを提供できているかというと難しいかと思います。多くのユーザーは移り気なので、違うメーカーのパソコンを買ったりします。もちろん細かい工夫の差はあるとしても、大局的には大きな差はありません。つまり付加価値がないので、値段勝負になってしまいます。すると、次第に利益が出なくなっていきます。

しかし、クラウドにデータを預かるサービスが付いているとなると、次にパソコンを買い替える際に、そのデータは自分のデータなので、そのサービスも使い続けなければいけません。したがって、一定数の会員を取ってしまえば、ハードウェアを安定的に売り続ける仕組みを作ることができます。ぜひ、このことを理解してもらいたいと思います。しかし、ハードウェアを作っている人にこの話をしても、では、すべてにバンドルして、最初からそんなサービスが使えるようにしようというメーカーはなかなか現れません。

一方で、iPhoneは購入した時点で、最初に登録して、iCloudが使われるように導線となっています。ですので、iPhoneを1回使い始めると、違うスマホに買い替えるよりも、同じAppleのiPhoneを買ったほうがデータを戻すのが簡単なので、継続して使われることがあたりまえになっているかと思います。

パソコンでも、同じようにすればいいと思うんのですが、なかなかそのようにはなりません。私は、とても重要なことかと思っています。ずっと使い続けてもらうサービスをいかに提供していくかがポイントかと思います。

しかし、Appleにも弱点はあります。iCloudにデータがたくさんあっても、手元の端末の記憶容量が少なければ、すぐにデータでいっぱいになってしまいます。ですので、私の場合、いつも容量のいちばん大きいモデルを購入しないといけないのです。端末代が高くて大変です。もちろん、そんなにデータを持っていない人であれば、そんな悩みはないかもしれません。私のようにデータをいっぱい入れる人は、いつも最大容量のモデルを買わないといけないです。次に買うときは、さらに容量の大きいモデルを買わないといけなくなります。ハードウェアの購入費用がどんどん高くなっていきます。

でも、データはクラウド上にあるのですから、手元に全部、戻す必要はないわけです。でも、そういう仕組みになっていないのです。手元の側にもないと不便なので、必ず容量の大きいもので、端末上にデータを貯めておきます。

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