佐々木隆仁が語る過去と未来2

就職から起業まで(1989年~1995年)

大企業故(ゆえ)の問題点

私の入社したコンピュータメーカーもMicrosoftのビッグユーザーであったので、当時、Microsoftと打ち合わせをしたことがありました。そこで、痛烈に駄目だと感じたことがあります。OSの開発のミーティングをMicrosoftと行うのですが、相手は海外から1人しか出席しません。こちらは、20人くらい出席します。Microsoftの1人が把握できていることと、こちらの20人で把握している領域が同じなんです。Microsoftは1人ですべてに対応するのに、こちらは20人いないと対応できないのです。これは、かなりショックでした。もちろん、Microsoftの方はとても優秀な方でした。

大企業で仕事をしていて難しいと感じていた点は、あまりにもたくさんの人がいて、それが細分化されています。特定の部分しかわからなくなっています。他のことになると、他の課になったり、他の部になったりします。すると、まったく見えなくなってしまいます。そうなると、開発にしろ、何をやるにも非常に時間がかかるようになります。また、実際に決定を下すことが遅れたり、お金もかかるようになります。そういったなかで、競争力のある製品を作るのは非常に難しいと感じるようになりました。それが、大手コンピュータメーカーで仕事をしていたときの正直な印象でした。

1989年以降、私が大手コンピュータメーカーで働いて、仕事をして感じたことでした。そこから悩みというか、なぜできないのかと思うようになりました。大手メーカーですので、お金もある、ブランド力もあり、シェアも高いのです。ちなみに私の入った大手コンピュータメーカーは、日本の情報システムでどこの領域においても、30%の以上のシェアを持っていました。まさに、日本でナンバーワンのコンピュータメーカーでした。30%以上のシェアを持っているというプレゼンスがあって、IT革命が起こった時期に、なんで覇権を握れないのか… 何か限界を感じさせられました。もちろん、平社員で入社し、6年しか経っていません。まさに、もっとも下層からしか見ていただけでしかありません。しかし、私の結論は「大企業では、できないのではないか」でした。新しい時代が始まり、革命的な技術が生まれて、急激に市場が大きくなっていくときに大企業のなかでその市場にキャッチアップして何かをしていこうとすることが、構造的に無理であったと思います。

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